主さんの話

motif. 進藤 純子
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紅葉が美しい11月。
近所の桜並木が鮮やかに彩り、銀杏が黄色に眩しく輝く特別な気分を味わえる季節です。

現在、わたしは丹波篠山にある場所を借りて電気窯を置かせてもらっています。
その場所の主は、丹波篠山で作陶活動をされていた備前焼の作家さんです。
以下、主(ぬし)さんと呼ばせていただきます。

そのいつもお世話になっている主さんは、丹波市に窯を築き作陶していた備前焼の作家さんに弟子入りし、そこで技術を磨かれ、独立後、作家活動をしてこられました。

丹波での田舎暮らし、師匠との思い出、山菜採り、雪深い場所でのかまくら作りなど、大変な思いも沢山したけれど楽しかった思い出話をよく私に話してくれます。

その備前焼の師匠の窯は、現在、師匠の息子さんが継いでおられ、11月に久々に窯を焚くとのことで、「手伝いに行くから見に来ない?」と主さんから誘っていただき、私も見学に行ってみることにしました。

紅葉の美しい並木道を通りぬけ、山間の奥の奥にある集落にたどり着いたときは、ちょうど大きな煙突から黒煙がモクモクと立ち上っていました。

薪を入れるお手伝いをされている方達と一緒に、窯の番をされている主さん。
時間を計りながら、窯の前方の蓋、両サイドの蓋を開けては炎の中に薪を入れていく様子を間近で見せていただくことができました。
ちなみに薪窯は6日間交代しながら焚き続けるそうです。
技術を活かすお手伝いができるというのは、誇らしく、羨ましくも思います。

窯番の合間に、かつてこの場所で作陶し、窯を焚き、思い出がたくさん詰まった場所を案内してもらいました。

修行していた当時は小さく細かった木が、すっかり大きくなったとか、ゆらりと窯場に現れた猫は子猫だったはずが時を経て老猫になっているとか。

過去の思い出の中と、現在を意識の中で行ったり来たりして、変化を味わっているご様子。

とても楽しそうで、生き生きとしていました。

私が滞在した時間はごく僅かな時間で、窯焚きの様子をただ眺め、話をしていただけなのですが、主さんと一緒にタイムスリップしたような気持ちになれた、ほっこりした時間でした。

PROFILE

motif. 進藤 純子
陶磁器で生活雑器や、オブジェ、アクセサリーなどを製作しています。
草や木、花、動物、ひと...等身近にあるものをモチーフに、ろくろやてびねりで形作ったものに絵付けを施し、個性をプラスして彩と楽しさを表現しています。
手作りの持つ独特の柔らかさと温かさ、筆で表す不確実さと濃淡に現れる動きで、作り手のその息遣いを感じていただけることを願っています。
【motif.オフィシャルサイトはこちら】
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