失敗の話 / motif. 

motif. 進藤 純子
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稲刈りも始まっている9月

蒸し暑さからはまだ解放されていませんが、ちゃんと予定通り道端には秋に咲く花が顔を見せていて、季節の移ろいを楽しんでいます。

丹波篠山市で借りている工房周辺は、四季折々の里山風景を眺められる場所で、金色に輝く稲穂と、黒枝豆の濃い緑の葉が織成しているこの季節の風景は格別です。

今回は、最近あった失敗の話です。

9月に作品展の予定があり、2ヵ月前あたりから制作を進めて、全作品の焼成が終わって検品しているときでした。
1点だけマグカップの取っ手と本体の部分のつなぎ目がきれいについていなくて、そこの部分の釉薬も剥離しているものを発見。

これは展示には持っていかないことにしました。

しかしこのマグカップ、自分用として使う分には問題なさそうなので、早速ブラックコーヒーを注ぎ入れてみました。
飲み終わり、そのマグカップを洗剤で洗うと、一度しか使っていないのに、カップの内側には、コーヒーのシミが山脈の尾根を描いたように着き、カップ外側の飲み口部分にも薄茶色のシミ。
洗っても取れませんでした。

何度も使って次第に汚れが付いていくのはよくあることで、その場合アルカリ性の洗剤などを使用すればきれいにとれるものではあるのですが、たった一度でこの汚れ方はいただけない。

もしかして同じ釉薬を使って焼成したマグカップは全てこうなるのではないかと、同じものすべてにコーヒー、紅茶、緑茶などを注いで確認しました。
全てではなかったものの一度使っただけでシミがついたものが、やはりありました。

内側の汚れと、取っ手と本体のつなぎ目部分の亀裂

このマグカップに使用した釉薬に問題があることはすぐにわかりました。
普段、下絵付けをしている作品にかけるものとは違う、自作の釉薬を使用していました。
この釉薬を使うときに一工夫して使用する必要があったのですが、すっかり怠っていたというのがこの失敗作を生み出してしまった原因でした。

最後に送り出す前に失敗作として発見できたことは、不幸中の幸いだったのかもしれません。

食器は素材によっては、使っているうちに汚れたりするものです。その変化を楽しむことができるものもあります。
それぞれの使い方によっても器の経年劣化の具合は違うし、どう捉えるかは使われる方によって千差万別ではあります。

私の作品の場合は磁器の土を使用しています。磁器の作品は強くて軽いし、なにより汚れにくいのが良いところ。
たった一回の使用で汚れが染みついてしまっては、磁器の良いところが台無しです。
時間をかけて作ったものが、失敗作に終わるというのはなんとも無念でやるせない気持ちになります。

だけど、この失敗に一方的に打ちのめされたというより、次はよりよくできるためにどうしたらいいかと考えるチャンスをくれました。
今回のこのことがきっかけで、自作の釉薬に慢心していたな・・・と改めて反省。
失敗して学んだ出来事となりました。

今回のマグカップは残念ながら作品展で並ぶことはありませんが、他の染付の作品はありますので是非ご覧いただければと思います。
詳しくは、TwtterInstagramをチェックしてみてください。

PROFILE

motif. 進藤 純子
陶磁器で生活雑器や、オブジェ、アクセサリーなどを製作しています。
草や木、花、動物、ひと...等身近にあるものをモチーフに、ろくろやてびねりで形作ったものに絵付けを施し、個性をプラスして彩と楽しさを表現しています。
手作りの持つ独特の柔らかさと温かさ、筆で表す不確実さと濃淡に現れる動きで、作り手のその息遣いを感じていただけることを願っています。
【motif.オフィシャルサイトはこちら】
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