【刺繍が教えてくれた学びとつながり】手刺繍Fika・芹澤いづみさん

MeTAS+編集部
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手刺繍Fika・芹澤いづみさんにインタビュー

「手刺繍Fika」として活動する、刺繍作家の芹澤いづみさん。

刺繍教室を開いたり、イベントに出店したり、YouTubeで動画を配信したりしています。

教室に来てくれる方は初めて針仕事をする方も多く、「最初に嫌な思いは絶対にしてほしくない」「楽しく針仕事と出会う場所にしたい」と考えているそうです。

今回は、インタビューで普段の活動の様子や、教室を立ち上げた経緯をうかがいました。

真摯に刺繍と向き合いながらも、困難にぶつかったこともあり、挫折を経験しながら今日の活動にたどり着いたという芹澤さん。

教室に来てくれる方への思いや他の活動から得た学びなど、深いお話まで聞くことができましたよ。

「とにかく楽しい」刺繍を始めたキッカケ

芹澤さんが刺繍を始めたのは、今から10年ぐらい前のこと。

体調がすぐれず、その状態でもできる趣味があったらいいなと思っていたのだとか。

ご主人のおばあ様がずっと使っていた手芸道具がたくさんあり、そこから裁縫と編み物と刺繍の道具をもらってきました。

最初にやってみた裁縫はミシン台とアイロン台を行き来するのがまだ体力的にしんどく、編み物は思ったようにできなかったため諦めた芹澤さん。

最後にやってみた刺繍に夢中になったそうです。

「とにかく刺繍が楽しくて、毎日刺繍ができたらそれでいい」と思うほどでした。

以前は児童養護施設に勤めていたそうですがその次の仕事が決まっておらず、「だったら好きなことをやってみよう」と始めたのが刺繍教室です。

8年くらい前から始めた刺繍教室は、「刺繍仲間がほしくて始めたみたいなところがある」とのこと。

来てくださる方のことは刺繍仲間だと思っており、あまり「生徒さん」というような言い方はしていないそうです。

近所のお母さんから「先生、来てよ!」と言われたことがきっかけで、子供のクラスも始まりました。

できなかったことができるようになった時に素直に喜ぶ子供たちの姿を見て、元気をもらっているんだとか。

「できるだけ分かりやすく説明しよう」「どうやったらもっと楽しんでもらえるかな」「じゃあこうしよう」と思う原動力になっていると言います。

芹澤さんのアトリエ&教室をルームツアー

いつも作業している場所を案内していただきました。

広々とした畳の和室に、作業用の机や、教室で使う机も置かれています。

畳が珍しくてなじみがない子供や、大人の方でもあまり座ったことがない方もいるため、みなさんでこの空間自体を楽しんでいらっしゃるのだとか。

できるだけ物を少なく、居心地が良いと思えるようにしているそうです。

芹澤さんが作業している机の上には、色とりどりの刺繍糸が色ごとに配置されていました。

中が見える方が気分が上がるため、全て透明のケースに入っています。

作業机と椅子は、なんとご主人の手作りです。

お仕事の関係上このような物を作ることが得意で、「大きい机がほしい」と言ったところ、余った材料を使って作ってくれたのだそうです。

畳が傷つかない仕様になっている椅子も、始めはものすごく大きな木だったところから、ちょうど良い高さになるように削って調整してくれたのだとか。

となりには大きな本棚があり、勉強中の児童文学や絵本、姪っ子さんが5歳の時に描いてくれた絵を刺繍したものなどが飾られていました。

棚に飾られていたのは、今まで制作した作品の数々です。

飾るものは季節に応じて入れ替えるそうで、鮮やかで色とりどりの作品が目を引きます。

それぞれの作品ごとに使用した刺繍糸を把握するため、メモ帳に糸を張り付けて、パッと見た時わかるように記録しているのだそうです。

見せてくださったのは、ハンガリーのマチョー地方の図案をアレンジして刺したもの。

実はこれを刺すのは2回目だそうで、刺繍を始めてすぐに作製したものと、最近作製したものの2つが展示されています。

2つ目を作ったきっかけは、教室で「なんで私は刺繍が上手にできないんだろう」と言っていたお子さんがいたことでした。

「今はこんなにさせるけど、私も初めて刺した時こんなのだったんだよ」とその子に見てもらったところ、そういった発言はなくなったそうで、「何か思うことろがあったのかな」とお話してくださいました。

刺繍教室を実現させてくれた「恩人」

芹澤さんが最初に刺繍教室をしていた、前田整体さんの道場にお邪魔しました。

広々とした開放的な道場にいらっしゃったのは、「二宮式 前田整体」の前田善一さん。

ずっとお世話になっていて、「いつか刺繍教室をしてみたい」と言った時に「だったら、ここを使ってください」とすぐ声をかけてくれたそうです。

前田さんご自身も整体を始めたかけ出しの頃、飲食店をしているご友人から「場所を貸してあげるからここで整体をしたらいい」と何回か使わせてもらって今日があると言います。

場所をかまえてからはご自分も「お手伝いできることがあれば」と思っていたこともあり、芹澤さんに声をかけたそうです。

整体は体をみることから始まりますが、刺繍もその人の特徴が作品の中に出ると言う前田さん。

「派手さはないんですけど力強さを感じる」「集中力というのが作品から伝わる」と語ってくださいました。

刺繍教室の始まりと挫折

刺繍教室を始めた時のことについても、お話をうかがいました。

始めは自分が刺繍をすごく好きだったため、みんなも好きだと思い込んでいたと言う芹澤さん。

どんどん回を重ねるごとに教室の参加人数が減っていってしまい、ほとんど誰も来てくれない状態が長く続いたそうです。

「もうやめようかな」と何度も思ったそうですが、友達が代わる代わる来てくれたり励ましてくれたり。

「じゃあもうちょっとだけやってみようかな」と何回も思い直し、そうしている間に来てくれる方が増え、今は毎月楽しく開催しているそうです。

実は、教室を続けるために別のアルバイトをしたこともあるんだとか。

おかげで勉強できたこともたくさんあり、どうすれば教室の存在を知ってもらえるのか、どうすれば刺繍の魅力が伝わるのかなど、「そういうことも考えないといけなかったんだな」と、刺繍を通していろいろなことを学んだそうです。

芹澤さんをMeTAS(満たす)瞬間とは?

芹澤さんが満たされるのは、どんな瞬間なのでしょうか。

今まで興味はあったけどやってみたらすごく楽しかったり、できなかったことができるようになって嬉しい時など、来てくれた方の表情がパッと変わる瞬間があるそうです。

「それが刺繍の魔法だなと思っている」と言う芹澤さん。

「そういう顔を見た時に、やっていて良かったなと思います」と、笑顔でインタビューを締めくくってくださいました。

手刺繍Fika・芹澤いづみさんの情報

刺繍に興味がある方は、ぜひのぞいてみてくださいね。

刺繍作家『手刺繍Fika』
Instagram:https://www.instagram.com/fika_embroidery/

 

【取材協力】

『二宮式 前田整体』
〒649-6621 和歌山県岩出市溝川278−1

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