「はじめ」の話
「はじめ」の話
mother’s wish 由佳です.
初めてのお目見え、わたくしと言うブローチの作り手を知っていただくためにファーストインプレッションが大切なのはわかっているのですが、わたくしは、あえてこの古ぼけたブローチの写真を初めての写真として選びました.
このブローチは、わたくしが幼い頃、そう50年以上も前に父に買ってもらい、今も引き出しの中にひっそりと収まっているブローチです.
ご覧のように、もう見る影もなく、とても外につけて出られるのような代物ではありません.ただ、このブローチが、わたくしの「今」の「はじめ」です.
ある頃、Instagramを覗いてみると、多くの人達(主婦や、子育て中のお母様などなど)が自分の作った様々な作品を紹介.さらには販売していることに衝撃を受けました.そして、いくつかのハンドメイドのイベントに出向いてみたのもこの頃です.
洋裁や、手芸の御教室に通ったこともありませんでしたが、何故だか、「やってみよう、できる」と思ってしまったのです.これを根拠のない自信というのでしょうか.とは言っても、もちろん確固たるものではなく.ましてや「楽勝だわ!」なんてものでもありません.それでも、何故だか、この世界に足を踏み込めそうな予感がしていました.
数年前のちょうど今頃の季節だったと思います.
人並み程度には、時折、子供が幼い頃には子供のお洋服を作ったり.手芸のキットを買ってきて作ったり(途中で投げ出したり?)、また手芸本と格闘(敗北したり?)したことはありました.なので、糸に布地、刺繍糸や毛糸が押し入れに所狭しと収まっていて.母に言わせれば「一生分あるわ」の資材があったわけです.
その頃、久しぶりにこのブローチを手にしてみて、このブローチをきれいに再現できたら、踏み出そうと思った.
それが mother’s wish の「はじめ」の話です.
世に出そうと(つまり販売しようと)作ったわけではなく.わたくしの中でのあくまでの「きっかけ」「踏切台」そんな思いでした.
拙い仕上がりですが、Instagramでは、いまだに、これはいつ販売するのか?と尋ねてくださったり、新規のフォロワーの方までが投稿を遡ってみてくださり、どこで買えますか?などとご連絡をくださることがあります.今も、わたくしの目につく場所にこの新旧のブローチは並んでいます.今では随分と埃も被り、色あせ、剥がれかけの箇所もありますが、この経年変化も、わたくしとともに過ごしてきたのだと思うと愛おしいものがあります。
では、あらためて「はじめ」まして
では、あらためて「はじめ」ましてのご挨拶です.
ハンドメイド販売の世界に足を踏み入れまだ数年です.数年ですが、もう還暦も超えてしまいました.ならば、手芸の経験だけは長いだろうと訊かれれば、答えはいいえ.毎日針を持つようになったのは55歳からです.
手仕事を何処かで修行したわけでもなければ.誰かに習ったわけでもありません.
ですから、世の中に手仕事のお作法と言うものがあるとするならば、全くの作法知らずです.
もし、わたくしの中に何か手仕事をすることへの動機付けがあるとするならば、幼い日に当たり前に見ていた母の裁縫、刺繍、編み物をする姿でしょうか.
母が何かを作るための生地選び 糸選びに付き合う父の姿.
そんな記憶かもしれません.
加えて言うならば、普段からアクセサリーを身につける日常があった訳でもありませんし、誤解を恐れずに言うならば、アクセサリー好きな訳でもありませんでした.そんなわたくしがさてどんなブローチを作っているのかは、折に触れて、こちらでご紹介できればと思っています.
ただし.その時々でも、「心を込めて」だとか、「一針、一針丁寧に」だとか取り立てて、それもあえて声高に言うことが本当に好きではありません.
なんだか恥ずかしくって言えません.(出来栄えはさて置いて、これは大前提.ご覧になってくださる方、お求めくださった方の判断だと思っています)
作業をしている時は、きっと、自分として「これはどうなのだろうか?」と自問自答の時間です.
さらに正直を言うなら、日々の雑多なことも考えていれば、ラジオから流れてくる話に笑ったり 突っ込んだりもします.鼻歌も歌えば、踊りもするし、ため息もつけば、居眠りもします.
ただ、このひと品を手にしてくださった方が.
「やさしい気持ちになってくれる」
そして手仕事の面白さの「小さな発見」をしてくださる.
そのことだけは願っています.
自分でデザイン制作したブローチ.パッケージデザイン、箱作りも一枚の紙からこの手で行っています。教室に通ったことも先生もなく、全くの我流ですが、そのことが遠因しているのか「ほかに見たことがないね」とのお声をいただくことが多くあります.
まだまだ少ない経験の中でのことですが.お客さまの多くが40代後半以上(80代の方も数十名以上)で、リピーターになってくださる方も多い.わたくしはこれらのことをとても嬉しく誇りに思っています.
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