「母の足の悩みから始まった、靴職人への道」クスノキシューズ・大森勇輔さん
大森勇輔さんにインタビュー
神戸市のアトリエ兼ショップ「クスノキシューズ」で、一足一足丁寧な靴づくりをされている大森勇輔(おおもり ゆうすけ)さん。靴職人を志したきっかけ、製作やアトリエのこだわりについてお伺いしました。
靴職人になるまでの道のり
大森さんは、大学卒業後、クリエイティブな仕事に就きたいと思っていました。しかし、就職氷河期のタイミングで内定をもらったのは、医療機器メーカーでの営業の仕事でした。就職後もクリエイティブな仕事への憧れが消えず、ものづくりの世界へ足を踏み入れようと決心しました。
お母さまとおばあさまが外反母趾で悩んでおり、その影響で足や靴に対する興味が芽生えたという大森さん。ふたりが痛がっている様子を見て育ったことが、「靴選びで困っている人に寄り添いたい」という思いへとつながりました。
足の不自由な人の靴を作る専門学校で2年間勉強をしてから、靴職人として靴づくりの仕事を始めました。
こだわりのオーダー革靴
クスノキシューズのショップ兼アトリエは、靴の製作をしたり、お客さんと直接お話をしたりする場所です。
クスノキシューズが手がける革靴は、「カジュアルオーダー」と「フルオーダー」大きく分けて2種類です。それぞれの特徴を紹介していただきました。
カジュアルオーダーは、男女問わず履くことができるナチュラルで軽やかなカジュアルシューズです。「今まで革靴を履いたことがない人もスニーカー感覚で普段づかいで履いてほしい。」と大森さんはいいます。
中でも一番人気は、“栄町”というモデルの革靴です。一番最初に生まれたデザインで、つま先部分が丸い形になっています。小指や親指も圧迫せずに楽に履くことができることが人気の秘訣です。
フルオーダーは、お客様専用の木型とオリジナルのデザインで仕立てます。まずは、採寸の結果をもとに足の木型を削り出すところからはじまります。そして、仮の靴を使い、履き心地と細かいデザインを最良のものへと突き詰めていきます。その結果を踏まえて、本番の靴をつくり、納品します。
愛用している機械や道具が並ぶ作業場
さて、ここからは大森さんのこだわりが詰まった作業場の紹介です。
革すき機は、重ねて縫うところが分厚くなってしまうのを防ぐ、革を薄くするための機械です。海外製に比べて、国産の機械が切れ味もよく、安定感があり、使いやすいそう。昔の機械のつくりが丁寧なので、オーバーホール*済みの革すき機を導入しています。
*機械を分解して点検や修理を行うこと。
ミシンも同じく日本製です。いつも座っている椅子の周りで作業が完結するように、機械や道具をレイアウトすることにこだわっています。
また、アトリエ中央のラックには、木型に入れて寝かせている靴や納品待ちの靴など、間もなくお客様の元へ旅立つ靴が並べられています。
1杯のコーヒーから始まる朝時間
「自分のテンションが上がるものを使う」ということを大切にしているという大森さん。こだわりの道具や飾りのある空間は、大森さんにとっても、お客さんにとっても、居心地の良い空間になっています。
作業場に着くと、お湯を沸かしながら気持ちを切り替え、1杯のコーヒーを淹れます。それを飲みながらメールチェックをするところから、1日がスタート。また、革包丁を研ぎ、工具の状態を整えることも毎朝のルーティンです。
大切にしている靴づくりの信念
大森さんがこれからも変わらずに大切にしたいのは、「お客さんと話をして、大森さんがその人の靴をつくること」。
「従業員を雇って、流れ作業にしたほうが効率はいいのですが、僕が採寸だけしてその人の靴を作らないことになるのは、ちょっと嫌ですね。」と大森さんは語ります。
お客様と話をして、作り手である大森さん本人が直接納品することも、クスノキシューズの靴の価値になっています。
大森さんの靴を愛するお客様の声
インタビューでは、心温まるお客様とのエピソードもお話してくださいました。
「一生あなたの靴を履いていくから、私より先に死なないでね。」と言われた時に靴職人としてのやりがいを感じたという大森さん。
また、大森さんが手がける靴を、就職のお祝いや育ててくれた感謝の気持ちを込めて贈り合う親子もいるそうです。
「人生の節目に立ち会える瞬間は、感動を分けてもらえるので、すごく嬉しいですね。」と大森さんはいいます。
「待ってくれているお客さんがいるっていうのは、活力にもなるし、やめるわけにはいかないですね。」という力強い言葉でインタビューを締めくくってくださいました。
インタビューを通して、靴づくりの技術はもちろん、 お客様一人一人を大切に思って靴づくりをしている真摯な姿勢が伝わってきました。
クスノキシューズ ・大森勇輔さんの情報
靴職人・ 大森さんが手がける革靴や店舗についての情報はぜひSNSからチェックしてみてくださいね。
『クスノキシューズ』
Instagram:https://www.instagram.com/yusuke_omori_shoes/
〒650-0017 兵庫県神戸市中央区楠町6丁目10-12 むらさきビル1F
PROFILE
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