台湾発祥のグローバル通販サイト「Pinkoi(ピンコイ)」が日本のデザイナーを世界に羽ばたかせる担い手に。独自の施策を担当者に訊いてみた。
クリエイターにとって、切っても切れない存在であるECサイト。
市場には様々なプラットフォームが存在し、各々の特徴や日々の機能向上によって、クリエイター自身のモチベーションアップや販路拡大を実現しています。
そこで、ブランド展開を海外まで視野に入れたとき、大きな壁となるのが「言葉」でしょう。
今回は、台湾発祥のグローバル通販サイト「Pinkoi(ピンコイ)」が、日本法人を設立して10年が経とうとしているタイミングで、デザイナーとのコミュニケーションやサポート体制など、サービスの利用方法や、世界との架け橋となる役割について、日本法人のBrand Acquisition Manager 山尾春菜子(はなこ)さんに伺いました。
(1)日本と世界をつなぐ越境ECとしての存在感
ーー「Pinkoi」は、発祥地の台湾で圧倒的な知名度を持つECですが、どのような特徴を持っていますか?
山尾氏「まず、Pinkoiは2011年に台湾からスタートしたECサイトですが、日本法人は2014年に設立されました。台湾では単純計算で10人に1人がPinkoi会員という計算になり、現地では高い認知度を誇ります。台湾の国家発展委員会から注目のスタートアップとして表彰もされました。」
台湾:2021年NEXT BIG賞授賞式 蔡英文総統とPinkoi CEOピーター・イェン
PinkoiがRam Pieceを授与
山尾氏「アジア最大級の海外通販サイトとして今もグローバルに広がり続けており、スタッフはグローバル全体で200名ほど、日本のオフィスには15名ほどが勤務しています。
Pinkoiの最大の特徴は、創業者のピーター・イェンが掲げている『デザインファースト』を軸としたECサイトであることです。デザイナー(Pinkoiでは作家や出店企業をそう呼ぶ)のプロダクトを魅力的にみせるサイトであることを重要視しています。
越境ECということで、アジアや北米など言語がまったく違うエリア同士で課題となる『言葉』や『発送』、『決済』などの壁を、デザイナーの負担にならないようにサポートさせていただいているのも私たちの特徴といえますね。
Pinkoiの日本デザイナーは、売上比率でいうと平均8割が海外のお客様というデータがあり、高い海外販売比率を誇ります。日本のプロダクトは世界からの注目度も高く、出店者が日本含めアジアから世界へシームレスに活躍できるようにPinkoiがその架け橋を担えればと思っています。」
(2)Pinkoiの登録方法や独自施策
ーー日本のデザイナーがPinkoiに出店するにはどのような手続きが必要ですか?
山尾氏「まず、Pinkoiの一つの特徴として”審査制”を導入しています。何度でもお申し込みしていただけるので、例えば写真のクオリティやブランド紹介の文章を改善して、晴れて登録といったケースもたくさんあります。」
ーーそうすることによって、サイト全体のクオリティや価値をキープしているのですね。他にはどのような条件がありますか?
山尾氏「『オリジナル商品』であること、もしくは『正規代理販売品』であること。これによって複数の出品者にわたって同じアイテムが販売されることを防ぎ、適切な価格で取引ができます。」
ーー審査にはどのくらいの時間を要しますか?
山尾氏「専用のフォームからお申し込みいただいて、約7営業日で審査結果をお伝えできる感じですね。全世界からの審査は台湾本社で一括して行っています。無事審査が完了すればブランドのページ設定や商品登録に進むことになります。
Pinkoiの独自の活動として、例えばミッフィーやハローキティとのIPコラボレーションを行っており、公募またはお声がけしたデザイナーに公式アイテムを作っていただく機会提供も行っています。それがきっかけとなり、そのブランドの人気が高まり売上が伸びることも多いです。」
(3)国ごとによる違い、日本独自の取組み
ーー日本国内のデザイナーの動向など、他のエリアとの違いを感じることはありますか?
山尾氏「お国柄でもあると思いますが、傾向として繊細なクオリティの高さを持つものが多いと思います。それが世界からの人気を集めています。
そして、コロナ禍で出店者数がグッと伸びましたね。2021年から2022年の1年で登録者数が2.3倍となり私達も驚きました。(※総数は非公表)
リアルなオフラインでの販売がメインだった方が、外出自粛によってオンラインに比重が移ったことや、円安による海外志向の高まりも大きな要因だと思います。
逆に2023年はコロナ対策も緩和されてきましたので、リアルイベントも回復傾向にあると思います。Pinkoiでも国内外のオフラインマーケットに積極的に取り組む予定です。」
2023年3月20日〜3月22日開催
アジア旅行をテーマに開催した「Shibuya Design Park by Pinkoi」では世界6地域から29のブランドが集結した
ーー海外からのオーダーや発送方法など、慣れていない人もいらっしゃると思いますが、何か施策はありますか?
山尾氏「Pinkoiの大きな特徴の一つに”自動翻訳機能”があります。商品ページは日本語のみの登録で多言語に自動で翻訳されます。また海外からの問い合わせはお客様の言語でメッセージがくるのですが、デザイナーは日本語で受け取れます。そしてそのまま日本語で返信していただけます。自動翻訳での意思疎通がうまくいかない場合は、日本のカスタマーサポートが無料で仲介・翻訳サポートをきめ細やかに対応しております。
発送に関してもデザイナーにご自分で発送作業を行っていただきますが、日本郵便のEMSや国際eパケットを使えば、通常の国内発送と変わらない感覚で発送できるという声をよく聞いています。
決済についても、各国・地域に合わせたシステムをPinkoi側で完備していますし、売上は日本の銀行口座への振込対応をしています。為替レートも毎月の売上レポートで明細を確認いただけます。
これらの仕組みによって、日本国内でやりとりするのと同じくらいスムーズな使い心地を感じていただけると確信しております。」
ーー様々なECサイトがある中でPinkoiのアドバンテージはどんなところにありますか?
山尾氏「多くのECモールがあり、それぞれに取引手数料の違いなどがありますがPinkoiとしては、すでに海外での認知度が高く、出店後は売上の8割が海外というデータがあります。外に向けて販売を伸ばしていきたいデザイナーにとっては、スピーディに海外展開を始められるのでメリットを感じていただけると思っています。
また、海外のお客様と直接やりとりできるため、お客様との距離感が近くファンになってもらいやすいことも特徴です。海外の方は写真付きで購入レビューをする方も多く、反応や交流を楽しみにショップ運営する方も多いですね。
あとは初期費用と月々の維持費用がかからないところでしょうか。」
ーーなるほど。SNSの活用などはいかがでしょう?
山尾氏「オフィスにPinkoiスタジオを設置して、YouTubeチャンネル向けの動画やTikTokの収録を行っています。発信がきっかけとなり、売上がグッと伸びる、いわゆる”バズる”ことが増えて、デザイナーにはお喜びいただける機会も増えました。」
ーーそうしたデザイナーのサポートも積極的に行っているのですね!
(4)Pinkoiで購入できる国内外のアイテムや海外から見た日本の特徴など
ーー取扱商品のジャンルはどのようなものがありますか?
山尾氏「アクセサリーや洋服だけでなく、グルメ、家電、家具、デジタルコンテンツなど幅広く取り扱っています。」
山尾氏「日本のグルメ商品はとても人気が高いですね。特に台湾の方は、お菓子を贈り合う文化があって、日本のお菓子が売れています。やはり親日家が多いというのはありますよね。京都や北海道のものも人気があり、よく売れています。
旅行で日本に来られて、台湾に帰ってから『日本の〇〇が食べたい』となってPinkoiで購入されるケースも多いですね。グルテンフリーのお菓子も人気があって『青山デカーボ』のかわいいクッキー缶もとても売れています。」
ーー実際に売れているアイテムには、どのようなものがありますか?
山尾氏「こちらにいくつか用意しましたので、ぜひご覧ください!」
商品名:空のアクリルキューブ(左) オーロラのアクリルキューブ(右)
価格:各2,000円
ブランド名:Kino.Q
制作方法:ハンドメイド
商品名:猫と金魚 サバシロ ※売り切れ
価格:4,800円
ブランド名:Eishun えいしゅん
制作方法:ハンドメイド
商品名:BLOSSOM 2wayオーバルショルダー/ウエストバッグ(左)
BLOSSOM 3wayクラウドバッグ(右)
価格:14,300円(左)18,700円(右)
ブランド名:ELEMOOD
制作方法:ハンドメイド、その他
商品名:上から時計回りで
1/Thinkk and Shoot (Leaf)※ケースのみ
2/DISCO カメラセット(プレミアムホワイト)
3/DISCO カメラセット(プレミアムブラック)
4/ CROZ ヴァンガード カメラセット
価格:上から時計回りで
1/ 18,120円 ※ケースのみの価格
2/ 27,240円
3/ 27,240円
4/ 25,630円
ブランド名: PaperShoot【公式】
制作方法:ハンドメイド、その他
商品名:左から順に
1/ Lily / 黒タトゥーレースのチョーカー
2/ Victoria / 黒タトゥーレースのチョーカー
3/ Twig / 黒タトゥーレースのチョーカー
価格:左から順に
1/ 1,880円
2/ 1,580円
3/ 1,780円
ブランド名:Sugar Valentine
制作方法:ハンドメイド
商品名:【限定BOX付き】太宰治五色セット
価格:7,400円
ブランド名:et seq.(エセク)羽根ペンネイルポリッシュ
制作方法:工場生産
※価格は、いずれも取材時(2023年6月)のものになります。
(5)これからの展望
ーー今後の展望を教えてください。
山尾氏「Pinkoiとして、日本は注力市場なので日本のデザイナーの発信・販売のお役に立てればと考えています。
最近は相次ぐ物価高で買い物の意欲が下がる雰囲気があります。私たちはオフラインイベントの開催でお客様に直接アイテムを見ていただいたり、SNSでの商品紹介に力を入れたりすることで、購買意欲を増進させていきたいと考えています。
日本はもちろん台湾・香港・タイなど海外でもオフラインイベントを開催してきました。現地へブランドの認知を広げるお手伝いもしていきたいですね。」
ーー購入したいユーザーに向けてオススメの使い方などはありますか?
山尾氏「私もよくPinkoiを使って海外のデザイナーから購入するのですが、中国語を話すことはできないので、自動翻訳機能を使って『〇〇の部分を〇〇に変えることはできませんか?』と、オリジナルのオーダーで購入することもあります。」
ーー細かいオーダーに対応してくれるデザイナーもいらっしゃるのですね!
山尾氏「はい! アクセサリーなどカスタムオーダーできるアイテムも多いので、ぜひデザイナーと交流していただけると嬉しいです。
先ほどSNSの活用の話をしましたが、年に1度『Pinkoi Design Awards』を開催して、まだ世界に知られていないデザイナーを紹介したり、注目のブランドを表彰させていただいたりもしています。
Pinkoiがデザイナーと世界のユーザーをより繋いでいけるように、今後も様々な仕掛けをして参りますので楽しみにしていただけると嬉しいです。」
ーー個人デザイナーの魅力が世界に届く架け橋として、Pinkoiの取組みに今後も注目していきます。山尾さん、ありがとうございました!!
PROFILE
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