アップサイクルで作る、1足の靴下から自分だけのソックモンキー【後編】

Kaori Sawada

靴下の産地として有名な奈良県広陵町。前編ではそこで廃業する予定だった靴下工場から譲り受けた靴下を使い、ソックモンキーを作るというワークショップを取材しました。後編では、靴下を使ったぬいぐるみ作家のぷちまゆさんにソックモンキーとの出会い、主催されている「バンビーナ♡マルシェ」について伺います。

※ソックモンキーとは、今から100年以上前のアメリカで誕生した、靴下から作られる猿のぬいぐるみのことです。戦争や不況により多くの人が貧しい暮らしを強いられ、子どものためのおもちゃも少なかった時代に、孫に何かおもちゃを与えてあげたいと思ったおばあちゃんが作り始めました。レッドヒールソックスという当時流通していた、かかとが補強され、赤い色の靴下を使用しているのが特徴です。

東日本大震災で出会ったソックモンキー

――ぷちまゆさんとソックモンキーとの出会いを教えてください。

 

2011年の東日本大震災により、宮城県の仮設住宅に暮らすことになった被災者のお母さんたちが作り初めた「おのくん」というソックモンキーをニュースで知ったことですね。少しでも収入になるように、里親になるという方法でお迎えすることができるので、私もなりたいと思いましたが、その時は人気でなかなか順番が回って来なかったので、まずは自分で作ってみることにしました。

(靴下の色はブルーの以外にピンクのボーダーもあります)

 

奈良県広陵町は靴下の産地として有名です。ソックモンキーの材料となる靴下は、そこで開催される「靴下の市」で購入していたのですが、もし廃棄されてしまう靴下があれば捨ててしまうのではなく利用できないかと考えるようになりました。そこでたまたま、都合により工場を閉められることになった方とお会いし、工場に残っていた靴下をいただけることになったんです。

 

――ソックモンキーは広陵町にピッタリのぬいぐるみですね。自分で作るだけでなく、ワークショップを始めたきっかけは何だったのでしょうか。

 

自分でソックモンキーを作り始めたのが2012か13年あたりで、それから数年後に近所でハンドメイド雑貨店をしている友人から教えて欲しいと言われ、その方のお店でワークショップをさせていただいたのが最初でした。ちょうど干支が申年だったということもあり地元の新聞や雑誌の方が取材して下さって、そこから別のイベントにも声がかかるようになりました。材料も身近で簡単にできるので、今ではデイサービスでも教えるようになりました。

デイサービスでは、昔針仕事をしていたという利用者さんもいらっしゃったりして、みんな楽しそうに参加されていますよ。

 

――気軽にハンドメイドが楽しめて、場所を選ばず参加しやすいことが魅力ですね。ぷちまゆさんは以前からからハンドメイドで何か作られていたのでしょうか?

 

子どもの頃から絵を描いたり、マスコットや手縫いの筆箱を作ったり、物を作るのは好きでしたね。大人になってからは自分の娘が幼稚園に入った頃に、カバンに付けられる編みぐるみやアクセサリー、服もよく作っていました。

夫のシャツを捨てるのがもったいないなとリメイクして息子の服にした時に、当時のママ友から「うちも作って!」と言われて作り、喜んでもらえるのが嬉しかったですね。

(ぷちまゆさん作の編みぐるみ)

マルシェを主催し、ハンドメイド作家さんが活躍できる場を作る

――そこからどのようにしてマルシェを主催されるまでに至ったのでしょうか。

 

最初は自分の作品と、お友達の作品などを集めて地元でマルシェを開催していました。そこからご縁が広がって、近鉄百貨店上本町店で2021年から「バンビーナ♡マルシェ」を開催することになりました。その後百貨店を中心に色んな場所で開催させていただいています。

 

――どんどん輪が広がっているんですね。マルシェの出店者さんはどうやって集めているのですか?

 

他のイベントで出会ったり、インスタを見て一目惚れしてダイレクトメッセージを送ったりしています。今回の(取材時に開催の)マルシェは、合計10名の作家さんが出店され、そのうち私を含め4名がワークショップを担当しています。

バラエティー豊かなマルシェの出店者さんを紹介します!

oranjun(ワンストロークペインティング作家)

さくらんぼ(布小物・ペイント作家)

sari(羊毛作家)

涼幸(フェルトおもちゃ作家)

nicotto(羊毛作家)

ほっこり屋 緑(樹脂粘土多肉植物作家)

Atelier Kana(アルコールインクアート作家)

 

みやも人形(布人形作家)

miikoro(バッグなど布雑貨作家)

そして、マルシェ主催者である耕田さんのぷちまゆ(ぬいぐるみ作家)

 

――マルシェなどのイベント運営は大変なことも多いと思いますがいかがですか?

 

そうですね。開催場所とのやり取りや作家さんが不公平にならないようにするなど、気を配ることは多いです。ただ、作品を置いてもらえるだけでも嬉しいと言って下さる作家さんもいらっしゃいます。少しでも多くのお客様に作家さんと作品のことを知っていただける機会を増やしたいです。

最近では、作家さん自身がライブコマースで作品を販売される機会も増えてきました。これからは作家さん、販売する人がどんな方なのかを知って購入したいというニーズが増えてくると思います。

 

――ご自身の作品作りやアップサイクル、そしてマルシェ運営と「物と人を繋げる」活動をされていますね。今後の目標はありますか?

 

これからも小規模なマルシェを中心に開催していきたいですね。奈良という少し落ち着いていて時間のゆとりがある地域柄か、私の周りにはハンドメイドで何かを作っている方が多いので、自分の身の回りのものも作家さんから買うことが多いです。私もアイディアを出しながら、一緒にハンドメイドの輪を作っていきたいですね。

今回話を聞くと、破棄される予定だった靴下をソックモンキーに作り変えるだけでなく、様々な取り組みを通じて新たな繋がりを生み出されているぷちまゆさん。来年1月から地元商業施設で作家さんの使いきれない資材を販売するハンドメイド素材市も開催されるそうです。

 

ぬいぐるみ作りに使う靴下も募集中とのことでしたので、気になる方はぜひ、ぷちまゆさんのSNSやマルシェをのぞいてみてください。

<作家情報>

ぷちまゆ(Petit Mayu)

メインアカウント

Instagram @minkymayu

バンビーナ♡マルシェ

Instagram @bambi_na_marche

https://lit.link/petitmayu

PROFILE

Kaori Sawada
2022年11月からMeTAS+で記事を書かせていただくことになりました!取材を通じて色んな方にお会いできるのが楽しみです。

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