奈良・生駒|パーツ作家さんに会いに⾏こう!【前編】Chiel /メタルパーツ
- Kaori Sawada
- 2022年11月からMeTAS+で記事を書かせていただくことになりました!取材を通じて色んな方にお会いできるのが楽しみです。
ハンドメイド作品に⽋かせない数々のパーツ。それらをハンドメイドで作られている作家さんがいます。そこで、以前に取材した芦屋のSERCEさんが、アクセサリー作りでパーツを使用されていた、2名の作家さんを訪ねました。
前回訪問したガラスビーズのパーツ作家「Melting Point」の上⽥さんの次は、メタルパーツを作られている「Chiel」の森本さんのアトリエ兼ショップを訪問しました。
場所は奈良の⽣駒。近鉄⽣駒駅に隣接する⿃居前駅から、⽣駒ケーブルに乗って宝⼭寺駅へ向かいます。
(1918(大正7)年にできた日本初のケーブルです。)
(駅を降りるとレトロな雰囲気が漂っています。商売繁盛の信仰を集める宝山寺への参拝客が訪れる町として発展しました。)
(こちらがChielさん建物の外観。街並みに合う趣のある建物です。)
(中に入ればまるで違う世界に来た様な気分に。窓からは生駒の町並みが見渡せます。)
なんとなくから偶然の出会いを経て、今がある
――まずこの町と建物の雰囲気に驚きました。なぜこちらを活動拠点として選ばれたのでしょうか。
私はこの町で生まれ育ちました。大人になり大阪に出て暮らしていましたが、子どもの頃からあったこの建物を購入することにしたのを機に戻り、後に主人となる家具職人と一緒に建物をリフォームし、アトリエ兼ショップ、そして自宅として使用することになりました。
(猫のナツメちゃんが出迎えてくれます。)
――メタルパーツの作家を始められたきっかけは何でしょうか。
偶然の出会いから始まりましたね。服飾学校を卒業後デザイナーとして就職したのですが、すぐに辞めてしまいました。その頃は大阪の南船場にセレクトショップが増えていて、そこにあるような作家さんのアクセサリーを私も作ってみたいと、なんとなく思って、知り合いのショップのオーナーさんに相談にすることにしました。そこへ向かっている途中で道に迷い、偶然アクセサリーの製造業者の建物をみつけました。1階で販売されていたパーツやアクセサリーがとても綺麗で、スタッフの方と話をしていたら「ちょうどアルバイトが辞めるから、ここでアクセサリーを作って売ったらどう?」と言われ、「そうします!」とその場で返事をして、次の日にはもう会社に挨拶に行きました(笑)。
(メタルパーツに装飾などの加工を施したもの。)
――まるでドラマの様な展開ですね。それからしばらく会社に勤めた後に独立されたのですか?
勤めたというか無給の弟子入りのような形で、最終的に工場で寝泊りするほどでした(笑)。販売からスタートし、製造を教わると、すっかり作ることが好きになってしまいました。合計8年ほど通ったのですが、その間に先代社長が私のことをまるで家族の様に可愛がってくれて、とても良いお付き合いをしていただきました。なので、後継者がいなかった社長がもし仕事を辞めるとなったら、私が継ごうかなと、ここでもなんとなく、考えていました。
そんな中、社長が突然病気で亡くなってしまったんです。ですが、ちょうど私がこの建物を購入した後だったので、社長の跡を継ぐのではなく、教わった技術を引き継いで独立の道を選びました。そこからこの場所での活動が始まります。
(左はエデンの園の知恵の木、右はトルコの華をモチーフにしたメタルパーツ。)
――なんとなくから始まった出会いが、森本さんの生きる糧になったのですね。お店にあるパーツのほとんどを森本さんが作られているのでしょうか。
メタルパーツは2次加工も含めて9割を私がここで作っています。メタル素材以外もプラスチックのビーズや、天然素材なら樹脂パール、骨、椰子の実、ウッドビーズ、クリスタル、ガラス、陶器、布、綿、皮など。アクセサリーはどんな素材でもパーツになるんですよ。パーツの種類は2〜3,000くらいはあると思います。
(ヴィンデージのボーンを彫刻し、草木染で染色した貴重なパーツ。)
(鳥は木で作られています。)
お客様はパーツを購入される方、出来上がったアクセサリーを購入される方、お仕立てを依頼される方、それぞれいらっしゃいますね。個人向けのレッスンも行っています。
(ピアスに加工されたもの。)
(レッスン用のアクセサリー。)
一度離れ、戻って来て分かったこの場所の魅力
――お店とオンラインショップ以外で販売されることもありますか?
この場所が大好きで、他で出店することは稀ですね(笑)。さらに私はこの場所や建物の世界観も含めて大切に思っていますので、それを外で伝えるのが難しいと感じています。お客様の中にはリフォームする時から書いているブログを最初から読んで、建物を見たくて来られる方もいらっしゃいます。
(家具職人だったご主人が作った家具に並ぶ森本さんが作ったパーツと、ナツメちゃん)
――建物ができたのはいつ頃でしょうか。
台帳が残っていないので詳細はわかりませんが、大正か昭和初期だと思います。隣が本宅でここが離れで40年ほど空家だったのですが、手入れされていたお陰で朽ちることなく残っていました。私は20代の頃からいつか自分の店を持ちたいと考えていたので、ここに初めて入って窓を開けた時、建物が眠りから覚めたような気がして「絶対この家にしよう!」と決めました。
この辺はもともと避暑地として栄えた色街でした。この建物は芸妓さんなどを斡旋する検番という事務所として使われていて、何代か持ち主が代わり、最後は帝塚山の女学校でお茶を教えていたおばあさんの先生が住んでいたそうです。なので、その頃の生徒さんがここを訪れて、建物がまだあることを喜ばれています。
――古い歴史や文化のある環境で育たれたのですね。
私の子どもの頃はまだ近所に帯屋さん、髪結屋さん、満洲から帰ってきた芸妓さんの自宅などがありました。家業の関係で、その方々の所にお邪魔し、着物や宝飾品に触れる機会もありました。
一度は都会に憧れて大阪に出て、この建物の購入がきっかけで予期せず地元に戻ることになったのですが、やはり一番落ち着く場所ですね。今の仕事に魅力を感じたのも、流行のデザインの洋服より、歴史や煌びやかさを感じる工芸的なものが自分に合ったのだと思います。
――この場所に興味が湧いて、パーツ以外のことをたくさん質問してしまいました。
ここに取材に来る方、皆さん同じですよ(笑)。
店舗情報
chiel atelier & shop
- 営業時間
- OPEN:13:00 - 16:00
- 住所
- 奈良県生駒市門前町10-9
- 備考
- Facebook:https://www.facebook.com/aurea.chiel/
※ご来店時は営業日・営業時間をHP・SNSにてお確かめください。
※取材時点の情報です
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